この1年間のなかで、3~4回隈研吾さんとお話をさせていただきつつ、多くの試作を経て完成した椅子です。 成形合板という技法でブナ材1.5㎜を2層にした3㎜の座と背の部材と1.5㎜を4層にした6㎜の脚の部材を相欠きと竹釘とボンドの接着のみの構造で成り立たせています。 スケスケは、完成版もあわせて全部で3つの試作品を製作しています。2つめの試作品では、スチールボルトを入れて強度を増し、50kgほどの耐久性を確保して着座もできるところまで進んだのですが、強度と引き換えに、実は最初期の隈研吾さんのデザインイメージからは離れていました。 2回目の試作品から次のステップに進むときに、隈さんから「当初のデザインでなんとか完成させたい」というリクエストといただきました。 これだけの薄さと補強の無い曲線構造で、強度を保つことは非常に難しいのですが、最終的に金属材は一切使わず、相欠き、竹釘、ボンドのみの構造だけで強度を保つ方法を試行錯誤し、この形に至りました。 なんとか座れる製品にしたいという思いの中で、それには至りませんでしたが、1年間をかけてさまざまなチャレンジさせていただく中で、職人達の技術力の向上、研鑽になり、とても良い経験をさせていただいたと感じています。
隈研吾氏からのメッセージ
東川町の雄大な自然と家具の技術力の高さに出会って、この町だからできる椅子を造りたいと思いました。 「スケスケ」は東川町の自然に溶けてしまうような、繊細さを追求しました。3ミリという薄い材料を紡いで出来上がった椅子は、東川町の家具の技術力の高さを発信できたと思います。
隈 研吾